FumioNonaka.com Newsletter 渋谷のコギャルはコスプレ最高!週末に中学1年生の娘が見ている学園物のTVドラマを眺めていたら、主人公の女子高生が三角関数の加法定理をこんな風に暗記していました。 [1] sin(α+β) = sinα cosβ + cosα sinβ 思わず吹出しつつ、よくいろいろ考えつくものだと感心しました。もっとも、加法定理には、つぎのようなバリエーションがあります。そうすると、どれがどの組合わせか、プラスかマイナスか、正確に覚えるのはなかなか難しそうです。 [2] cos(α+β) = cosα cosβ - sinα sinβ 6月8日火曜日に発売する『ActionScript 3.0による三次元表現ガイドブック』は、三角関数や加法定理はもちろん、座標変換のための行列計算まで、数学的な解説も行っています。けれど、大切なのは理解であって、暗記することではありません。「はしがき」にもつぎのように述べました。 数学の公式集に掲げられている式のうち、おそらく3割の求め方を「理解」すれば、残り7割はそこから導けます。少し時間はかかっても、基本となる考え方を学ぶことにより、さまざまな問題を解く力が高まるのです たとえば、本書で(x, y)座標を角度θ回転する変換行列(「回転行列」と呼ばれます)は、つぎのように表せることを習います。すると、あとは行列の掛け算と三角関数の定義を覚えていれば、加法定理は導けます。
三角関数の定義により、座標P(cosα, sinα)は原点(0, 0)からの距離が1、正のx軸となす角度がαの点です。同じく、点Pを原点で角度β回転した点Qの座標は、(cos(α+β), sin(α+β))で表されます。他方で、角度βの回転行列に点Pの座標(位置ベクトル)を掛け算すれば、点Qの座標になります。つまり、つぎの式が成立ちます。
上式左辺の行列の掛け算を決まりにしたがって計算すると、積はつぎのとおり求められます。
上のふたつの式は等しいので、右辺同士も当然等しくなります。
これで前記加法定理の[1]と[2]の式が一度に導かれました。[3]と[4]については、角度(α-β) = (α+(-β))として、すでに求めた[1]と[2]の加法定理を用います[*1]。 それでは、回転行列の各要素(成分)の値を忘れてしまった場合はどうしましょう。そのときも、行列の掛け算と三角関数の定義から、各成分値は求められます。忘れてしまった成分値は、a、b、c、dとでもして、x軸上の座標(1, 0)を掛合わせます。
x軸上の座標(1, 0)を原点(0, 0)から角度θ回せば、三角関数の定義より、座標は(cosθ, sinθ)になります。したがって、a = cosθ、b = sinθです。同じように、y軸上の座標(0, 1)を原点でθ回した場合について考えれば、c = -sinθ、d = cosθであることもわかります。 もちろん、テストなど時間制限があるときは、いちいち計算して公式を求めていたらロスは大きいです。しかし、導き方が理解できると、結局覚えやすく忘れにくくなります。何より、「はしがき」に書いたとおり、少しくらいひねった問題でも考えられる応用力が養われます。 暗記やコピー&ペーストは簡単で手っとり早いことは確かです。けれど、新たな問題に対応できる力は、基本を理解することにより高まると考えます。
作成者: 野中文雄 Copyright © 2001-2010 Fumio Nonaka. All rights reserved. |
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