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Creators MeetUp

マイナスと借金と、時々、複素平面


マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか。小学生に説明しようとしたとき、借金にたとえる人が少なくない。でも、借金はマイナスだろうか。虚数単位i×iは-1になる。プラスマイナスの実数軸に虚数軸を組み合わせた複素平面にも少し触れる。

このレジュメは、2015年9月12日土曜日に催された第32回Creators Meetupで務めた同名の高座の参加者向けとして書いた。当日のYouTube録画をつぎに掲げる。


01 マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか

(-1)×(-1) = 1であることを、つぎのように証明してみせる説明がある(「なぜ-1と-1をかけると+1になるのか」参照)。

1 + (-1) = 0

等式の性質より、両辺に右側から-1を掛ける。

{1 + (-1)}×(-1) = 0×(-1)

分配法則より、つぎの等式が導かれる。

1×(-1) + (-1)×(-1) = 0×(-1)
-1 + (-1)×(-1) = 0

等式の性質より、両辺に左から1を加える。

1 + {( -1) + (-1)×(-1)} = 1 + 0

結合法則により、左辺の足し算の順序は変えられる。

{1 + (-1)} + (-1)×(-1) = 1

したがって、つぎの等式が成り立つ。

(-1)×(-1) = 1

だが、マイナス×マイナスの答えさえわからない前提なのに、等式の性質や分配法則・結合法則は使ってよいのか。


02 借金はマイナスか

わかりやすく説明しようとして、マイナスを借金にたとえる例は多い。でも、借金が増えても、その額の現金が増える(図001「貸借対照表」参照)。マイナスになるのは、利息の支払いだけ。たとえば、車をいつでもタダで貸してくれるという申し出があったら、あとで返さなければいけないから損したことになるか。

悪いのは、浪費の目的で返すあてもなく、高利貸しに借りることだ(「借金はマイナスか?」参照)。企業が適正な金利で借り入れをして、投資した事業から金利を上回る収益が上げられれば、他人の金で儲けたことになる(「レバレッジ」参照)。

図001■貸借対照表(バランスシート)
資産 負債
資本

現金

資産
借入金
負債
資本

資本金は返す必要がないので、かつては実質的に安い配当(業績が悪ければ無配)で済ませられるから得だといわれた。しかし、今では資本に対して市場の金利よりも高い収益率を上げ(「自己資本利益率」参照)、株価や配当で報いなければ、株は売られて資本の調達がむずかしくなる(「有利子負債を増やして、財務レバレッジを高めるわけね」参照)。


03 マイナスの掛け算は伸縮して180度回す

マイナス×マイナスをプラスにするのは、四則演算が正数でも負数でも矛盾なく成り立たせるため(「マイナス×マイナス」参照)。厳密には、正負の数や四則演算を定義する中から導かれる(「マイナス1かけるマイナス1が、なぜ1なんだ問題」参照)。

矛盾のない考え方は、応用・発展させやすい。実数を表す数直線で見れば、正数の掛け算は原点0からの伸縮。そして、-1の掛け算は原点0で180度回転することになる。aを正数としたとき、-a = a×(-1) = (-1)×aなので、-aの掛け算は0を原点として、aの比率伸縮して180度回転、または180度回転してaの比率伸縮する操作。

図002■マイナスの掛け算は絶対値の比率伸縮して180度回転する

a > 0としたとき
図002上

図002下

虚数単位iは2乗すると-1になる。-1の掛け算が数直線の原点から180度回転することだとすると、iの掛け算を90度の回転と捉えることができる。

i2 = -1

04 複素平面

実数の数直線(実軸)の原点0から単位がiの直交する数直線(虚軸)を定めると、複素数(z)を直交平面で示すことができる。これが複素平面だ(図002)。

z = x + iy

図003■複素平面
図003
引用: Wikipedia「複素平面

ベクトルと異なり、複素数は乗算ができる。その場合、原点からの距離は絶対値の積に等しく、実軸となす角度(偏角)は和となる。

図004■複素数の乗算
図004

絶対値が1で実軸と角度θをなす複素数(z)を乗じると、複素平面上の任意の点の複素数を原点0でθ回転させる。

z = cosθ + i sinθ

ベクトルの演算には掛け算がない。ベクトルを回転するときは、回転の成分値が定められた2次正方行列(2行×2列)を乗じる。絶対値が1の複素数による乗算は、この回転行列と同じ役割を果たす。


05 オイラーの等式

複素数の乗算では、角度(偏角)は和になる。掛け算が加算になる演算は、ほかに指数がある。

22×23 = 22+3 = 25

すると、複素数を指数で表すことはできないないだろうか(「複素数のお話2」参照)。

a = cosθ + i sinθ

この関係式は、レオンハルト・オイラーによって見出された。

オイラーの公式
e = cosθ + i sinθ

作成者: 野中文雄
作成日: 2015年9月12日


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