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Creators MeetUp

方程式のはなし


数学嫌いというのは、方程式あたりがそのきっかけになるのではないか。そして、三角関数が致命傷になり、微分でとどめを刺される。しかし、方程式のよいところは、「機械的に」解けることだ。機械的にできることは機械に任せるのが筋なのに、それを繰り返し手計算させられるのでは嫌いになるのも無理はない。人のやるべきことと、機械に委ねればよいことを切り分けると、方程式の意義がわかる。

このレジュメは、2015年11月21日土曜日に催された第34回Creators Meetupで務めた同名の高座の参加者向けとして書いた。当日のYouTube録画をつぎに掲げる。


01 つるかめ算

ふたつの未知数を、互いの関係から立てた式によって導く。

つるとかめが、合せて6匹います。足の数は合計20本でした。つるとかめは、それぞれ何匹いますか?

全員に足を2本ずつ引っ込めてもらう(図001)。

20-6×2=20-12=8本

残った8本がかめの足なので、かめは4匹でつるが2羽になる(FumioNonaka.com Newsletter: no.068「つるかめ算」参照)。

図001■つるとかめの総数と足の合計数からそれぞれの数を求める

図001左 図001右

ほとんど、一休さんのとんちに近い考え方をしなければならない。


02 面積図

頭の数と足の本数を2辺とする長方形の面積から導く。面積の過不足を考えながら組み合わせた長方形から、問題に当てはまる数を探す。

図002■頭と足の数が2辺となる長方形の面積から過不足を考える

図002左 図002右

受験テクニックとしてたしかに解けるものの、面積という技巧の不自然さが否めない。


03 連立方程式

わからない数(未知数)がわかったことにして、互いの関係を等式(方程式)として表す(FumioNonaka.com Newsletter: no.010「わかったことにする」参照)。犯人の存在を仮定して推理する探偵ドラマと考え方は似ている。未知数と同じ数の1次方程式を連立すれば、原則として解ける。

つるはx羽、かめはy匹とする。

x+y=6 …(1)
2x+4y=20 …(2)

解き方には「加減法」と「代入法」がある。

加減法の方がエレガントに解きやすい。

x+y=3 …(1)
y+z=5 …(2)
z+x=4 …(3)

(1)+(2)+(3)
3x+3y+3z=12
x+y+z=4 …(4)
(4)から(1)(2)(3)をそれぞれ差し引く
x=1, y=2, z=3

しかし、エレガントな解答は汎用性がなく、一休さんのとんちに逆戻りになる。機械的に解くものは、機械に任せる。プログラムを書くなら、代入法が汎用性に優れる。


04 連立1次方程式を行列で解く

連立1次方程式は、行列を使えば機械的に解ける(方程式以外の使い途については、第20回Creators MeetUp「行列?なにそれ?おいしいの」参照)。

ax+by=p
cx+dy=q

上記の連立2元1次方程式は、行列の乗算で表せる。

 a   b   x   p 
 c   d   y   q 

3つの行列をつぎのように、それぞれA、X、Pとおく。

A  a   b  X  x  P  p 
 c   d   y   q 
AX=P

Aの逆行列はA-1で表される。逆行列を乗じると単位行列(E)となる(A-1A=E)。単位行列は乗じた行列の値(成分)を変えない(EX=X)。

A-1AX=A-1P
X=A-1P

未知数がひとつ(x)だけの簡単な方程式と同じかたちになる。考え方と解き方はむずかしくない

ax=p → a-1ax=a-1p → x=p/a

ただし、計算のわずらわしさはむしろ増す。01「つるかめ算」の例では、つるは(24-20)/(4-2)=2羽、かめが(20-12)/(4-2)=4匹と計算される。

 x  (dp-bq)/(ad-bc)
 y  (aq-cp)/(ad-bc)

05 結論

方程式や行列についてはつぎのように考える。

参考: TED.com「コンラッド・ウルフラム:コンピュータで子どもたちに教える本当の数学


作成者: 野中文雄
草稿日: 2015年11月21日


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