Adobe Flash非公式テクニカルノート 力のモーメント
かたちの変わらない固いもの(「剛体」といいます)を回転させるとき、その力のかかり具合は「力のモーメント」という考え方で表されます。柄の細いドライバーと太いドライバーとでは、同じ力を加えてもねじの回しやすさが変わります。その回しやすさが、力と区別された力のモーメントで示されるのです。インスタンスに何らかの力のパラメータを働かせて回転させようとするとき、この力のモーメントの考え方が用いられます。 01 力のモーメントの大きさ 天秤はてこの原理を用いたはかりです。したがって、てこも同じように、力を加える位置(力点)が支点から遠いほど、力の働きを大きくできました。ただ厳密には、力の方向を考える必要があります。てこの棒と同じ方向(支点と作用点を結ぶベクトルに平行)に力を入れても意味がありません(図001上図)。もっとも力のかかり方が大きいのは、棒に対して垂直(支点と作用点を結ぶベクトルに垂直)に力を加えたときです(図001下図)。 図001■てこと力を加える向き 力のモーメントの大きさは、一般につぎのように定められます。下図002のように、てこの支点に当たる回転の軸をO、力を加える点をPとしてOPをベクトルrで表します。点Pにベクトルrと成す角θで加えた力をベクトルFとするとき、ベクトルrに平行な成分F//と垂直な成分F⊥に分けます[*1]。すると、前述のとおり、F//は力のモーメントには関わりません。 つまり、力のモーメントMの大きさ|M|は、ベクトルrとF⊥の大きさとの積になります。F⊥の大きさは|F|sinθです[*2]。したがって、つぎの式が導かれます。 |M| = |r||F⊥| = |r||F|sinθ 図002■力のモーメントの大きさを求める
02 力のモーメントが表すベクトル M = r×F 外積r×Fの大きさは、前項で示したとおり|r×F| = |r||F|sinθです。ベクトルは、大きさに方向が加わります。ベクトルMの向きは、ベクトルrとFのどちらとも互いに垂直で、回転の軸を示します(図003)。回転軸ですから、この方向に回る訳ではありません。ベクトルMの向きに右ねじを締める回転になります。 図003■力のモーメントが表すベクトルの向きと回転 3次元空間のベクトルとしてr(rx, ry, rz)とF(Fx, Fy, Fz)の成分が与えられたとき、外積r×Fはつぎの式で導かれます。なお、この式からわかるように、外積では一般に交換法則は成立ちません。ふたつのベクトルの順序を入替えると成分値の正負が逆になり、外積のベクトルの向きは反転します[*4]。 r×F = (ryFz - rzFy, rzFx - rxFz, rxFy - ryFx) 2次元平面で考えるときには、ベクトルr(rx, ry, 0)とF(Fx, Fy, 0)のz座標(成分)値は0です。上記の計算式にしたがえば、外積r×Fのベクトルはつねにz軸と平行になります。つまり、外積のxおよびy座標(成分)値は0です。回転の方向は、z座標(成分)値の正負でわかります[*5]。 r×F = (0, 0, rxFy - ryFx) 2次元平面における回転を力のモーメントにより表現した例としては、「インスタンスをドラッグで回して動かす」をご参照ください。
作成者: 野中文雄 Copyright © 2001-2012 Fumio Nonaka. All rights reserved. |
|||||||