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Creators MeetUp vol.30
ネイピア数 〜美しきムダな数〜
「ネイピア数」eは、自然対数の底として用いられ、多くのプログラミング言語に定数Math.E
として備わる。けれど、ほとんどの人生にまったく必要のない数で、この定数を使わずに過ごすプログラマが大半だろう。これほどまでに実用性のとぼしい定数が、数学や自然界のふとした端々に顔を現す。そんな「ネイピア数」の生態を追ってみたい。
このレジュメは、2015年7月18日土曜日に催された第30回Creators Meetupで務めた同名の高座の参加者向けとして書いた。当日のYouTube録画をつぎに掲げる。
00 明日も使えないムダ知識
01 ネイピア数の由来
自然対数の底eの呼び名「ネイピア数」の由来はジョン・ネイピア(John Napier)。対数の発見者として知られる(図001)。
図001■ジョン・ネイピア
引用: Wikipedia「ジョン・ネイピア」
明日も使えぬムダ知識 01
「ネピア」(nepia)のブランド名の由来となった王子製紙がニュージーランドに進出した町の名前は、ジョン・ネイピアと同じ「Napier」だった。
02 ネイピア数を求める
ネイピア数を見い出したのはヤコブ・ベルヌーイだとされる。複利計算の過程でこの定数の重要性に気づいた。
明日も使えぬムダ知識 02
「ネイピア数」の名前の由来となったジョン・ネイピアは、実はネイピア数を発見していなかった。
03 100分の1を100回やってみる
「100回試したら一度は起こって欲しい事象に1/100の確率を使う馬鹿多過ぎwこれを100人で試したら、36人は統計的に100回では起きない概算になる。」(遠藤雅伸@evezoo)
参考: ゲームの神様「100分の1を100回やってみる」乱数は、意図した演出の範囲から逸脱しない誤差の揺らぎに使うべき。100回試したら一度は起こって欲しい事象に1/100の確率を使う馬鹿多過ぎwこれを100人で試したら、36人は統計的に100回では起きない概算になる。
— 遠藤雅伸 (@evezoo) 2010年11月10日
たとえば、100個にひとつ当たりが入っているチョコレートを箱買いした場合と、100個に1個の割合で当たり玉の入った福引の場合の違い。
図002■福引の「ガラポン」
1/nの確率でn回試しても事象が起きない確率を計算してみた。
上記リンクの中でm = n - 1と置いたとき、式は厳密にはつぎのように変形される。
(1 - 1/n)n = {1 / (1 + 1/m)}m+1
= {1 / (1 + 1/m)}m{1 / (1 + 1/m)}
nを無限大にすればmも無限大になり、前項は1/eに、後項は1に収束する。したがって、極限値は(1/e)×1 = 1/eとなる。
04 ベルヌーイの螺旋
「ベルヌーイの螺旋」(対数螺旋)は、極座標表示(r, θ)で
r = eθ
により描かれる(図003)。
図003■対数螺旋
引用: Wikipedia「対数螺旋」
一般には、螺旋の広がる大きさ(a)と曲がり具合(b)を調整する係数が加えられ、つぎの式で表される(Wikipedia「対数螺旋」)。
r = aebθ
自然界にも見られ、建造物に採り入れられた例もある。拡大・縮小してもかたちが変わらない(図004)。
図004■拡大・縮小してもかたちが変わらない
引用: Wikipedia「対数螺旋」
数学的には、原点と螺旋上の任意の点を結んだとき、その線分と接線の角度が一定になる(図005)。はやぶさが獲物に近づくとき、対数螺旋を描いて飛ぶ(Wikipedia「対数螺旋」の「自然界における対数螺旋」)。
ハヤブサは獲物まで最短距離で飛ばず、対数螺旋の経路をたどる。ハヤブサの目は頭の両側にあるため、獲物を一定の角度で捉えながら飛行すると、図のように自然と対数螺旋飛行になる。(『黄金比はすべてを美しくするか?』より) pic.twitter.com/hlC3np98QM
— 風霊守 (@fffw2) 2014年7月27日
図005■原点と螺旋を結ぶ線分とその点の接線の角度はつねに一定
引用:「logarithmic spiral」
ベルヌーイの望みは Eadem mutata resurgo(変化しても同じように生まれ変わる)の語句とともに、墓石にこの螺旋を彫ってもらうことであった(Wikipedia「対数螺旋」の「歴史」)。
05 オイラーの等式
【オイラーの公式】
eiθ = cosθ + i sinθ
特別な場合としてθ = πを代入する。
【オイラーの等式】
eiπ + 1= 0
e : ネイピア数。自然対数の底。微分積分学で広く出現。
i : 複素数における虚数単位。積分などにおいてより深い洞察に導く。
1 : 乗法の単位元
0 : 加法の単位元。
π : 円周率。三角比、ユークリッド幾何学、微分積分学で頻出。
数学的な美を示す。「なにも足さないなにも引かない」。
全世界の数学者が感動した!!
ベンジャミン・パース(19世紀ハーバード大学数学教授)のことば
[2018年6月2日: 追記]
appendix 秘書問題
解にネイピア数eが表れる興味深い問題に「秘書問題」がある。解説は「秘書問題 – 結婚相手や恋人はこうやって選ぶのがベスト!」がわかりやすい。
作成者: 野中文雄
更新日: 2018年6月2日 レイアウトを整え、画像の挿入など若干の補正を加えた。また参考として、appendix「秘書問題」を追加。
作成日: 2015年7月19日
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